わんころけっとのアメリカに暮らしてみたものの

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アメリカの劇場で合法的に働くために必要なことは?

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結論から言うと、アメリカで合法的に働くには就労ビザが必要です。

学生ビザで入国し、その後、就労ビザを取得せずに、そのまま滞在を続ける人もいますが、合法的なビザ・ステイタスなしにアメリカで就労することは全くお勧めしません。合法的なビザなしに滞在を続けると不法滞在となり、その後、不法滞在期間に応じて3年、あるいは10年以内の再入国禁止が課せられます。原則、180日以上1年未満の不法滞在の場合、3年の再入国禁止、1年以上の場合、10年の再入国の禁止、180日以内であってもビザ申請の段階で拒否される可能性があります。また現在、観光目的の米国入国の場合、ESTA申請を行わなければなりませんが、ESTA申請が利用できず、別途ビザを申請しないと再入国できない、といったケースもあります。(出入国に関する法律は移民法と同じく、頻繁に改定されますので、最新の情報については個々人でリサーチをお願いいたします)

また、不法滞在歴があると、将来、合法的なビザステイタスを取得しようと考えた際にも深刻な問題となる可能性がありますし、アメリカ生活に必須の社会保障番号(Social Security Number:日本のマイナンバーのようなもの。ただし、米国では多くの場面でSSNを必要とされます。)の取得が難しく、結果、健康保険や年金制度への加入、運転免許証の取得、銀行口座の開設、まともな会社からの報酬受取、社会保障制度の活用など、アメリカで生活していく上で必要な制度の利用が困難となる可能性があります。なにより、不法滞在の身分では日本に里帰りすることも不可能になってしまいます。*1ですので、アメリカで働くための必須条件は就労ビザの取得、合法的な地位の獲得です。 

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就労への一般的な道筋:劇場技術者・デザイナーの場合

アメリカの劇場で舞台監督や大道具、照明・音響技術者、あるいはデザイナー等として働きたいと考えた場合、最も一般的な手順が以下です。

  • アメリカの大学か大学院に入学し希望する職種と関連する学科を履修する(学生ビザ・F−1ビザの取得:劇場技術者を教育する高等教育機関がほとんど存在しない日本と違い、アメリカの劇場で働いている技術者・デザイナーは、ほぼ全員、大学か大学院で専門知識を学んでいます。)
  • 在学中に卒業生や教授のコネを活用し業界内のコネクションを拡げる。インターンやアシスタントをして活動実績を積み上げる(活動実績は、その後のO−1ビザ申請にとって重要
  • 大学・大学院卒業後に、Optional Practical Training(OPT:フルタイムの学生として1年以上学校に通い続けた後に、専攻した分野と関連のある職種で有給で就労を行うことができる制度。就労には学校と移民局の許可が必要で、在学中から利用できる場合もあり、在学中と卒業後に分けて取ることも可能だが、期間は最長12ヶ月が原則。取得期間や必要条件等の詳細は、学校学生課や弁護士にお問い合わせ下さい。)を取得し、活動実績を積み上げるとともに、O-1ビザ申請(O-1ビザ:芸術分野で並外れた能力、または映画やテレビ業界で並外れた業績を上げている個人に向けたビザ。申請には、活動実績を証明する書類や業界関係者からの推薦状などが必要で、O-1ビザ申請中、もっとも困難な作業の1つと言われています。)のための準備を行う。
  • O-1ビザ申請のためのスポンサーとなる雇用主やエージェントを見つけ、移民法専門の弁護士を雇い、ビザ申請を行い取得する。(ビザ申請に関する法律は頻繁に変わることが多く、O-1ビザ申請者の多くは、早い段階で移民弁護士と会って申請に関する助言や情報を得ます。その後、申請書類作成や申請作業を依頼しますが、推薦状や活動実績の証拠など、個人で準備しなくてはならない資料・書類も多数あります。)

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ビザを必要とする労働者にとって厳しい現状だからこそOビザが有利

もちろん、O-1ビザを取得したからと言って、フルタイムで雇用されるケースを除けば、すぐに仕事があるわけではありませんが、上記過程を経るうちに、フリーランスとしても稼げる土壌ができてくるといった側面もあります。現在のビザを必要とする労働者の状況は厳しくなっていますが、だからこそ、専門性と学歴、経験を重視するOビザは他の雇用ビザよりも有効だと思います。

また一般のオフィスで従事するH-1ビザ保持者がグリーンカードを申請した場合、職種にもよりますが、7年以上かかる場合もあり、その間、H−1ビザを維持し続けるのは経済的、精神的な負担がかなり大きくなります。O−1ビザであれば、最短1年程度でグリーンカードを取得できるケースもあります。

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ビザ取得までの方法は1つじゃない。

上記は、あくまで一般論で、就労までの道筋は人それぞれ様々です。知人の中には、米国で大学などには行かず、日本の劇場からいきなりやってきて、アメリカの劇場でインターンシップをやり、劇場から認められてビザをスポンサーしてもらいOビザを取得、その後、フリーランスとして働き、今ではグリーンカードも取得した知人もいます。彼はすでに日本の会社でもらっていた当時の給与をはるかに超える年収をフリーランスとして稼いでいると聞きました。

多くの人にとって、ビザ申請作業は精神的、身体的、経済的な負担が大きく、”ビザを取得してアメリカで働く”という強い意思がないと、なかなか目的を全うするのは大変です。 なので「どうやったらビザ取れますか?」と聞かれますが、私はいつも「執念を持つこと」と答えています。まったくなんのアドバイスにもなっていませんね。しかし、周りを見た時に「なにがなんでもビザを取る」と強く思った人は大概ビザが取れているように感じます。ビザに関する法律や状況は頻繁に変わりますので、常に情報をアップデートし、証拠書類を積み上げることが大事ですし、適時、移民弁護士のアドバイスを受けることも重要です。同時に人との出会いや運、めぐり合わせも大きな要因となります。「ビザを取りたい」と強く思っている人には、継続する力と、人との出会いを大切にしたい、との思いがあるからかもしれませんね。

 

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注}このブログで書かれている内容は、筆者の個人的経験がベースです。筆者は移民法専門の弁護士ではありませんので、あくまで参考程度とし、実際のビザ申請は移民弁護士と相談しながら行ってください。

 

*1:出国は可能ですが、戻ってこれないリスクがあるため。